古い時代の五徳の修理

古い時代の五徳の修理_01

この五徳は、恐らく明治時代までは遡れるような品物です。
非常に大きく、径は300mm程度あります。
鉄質は、蹉鉄原料の古鉄で、江戸時代前後の幾代の鉄がまとめ上げられ使用されていますが、五徳として製品になったのは江戸時代の事では無いでしょう。

もともとは屋外で牛の飼料を煮込む際に使用されていたと言いますが、現在は古民家のいろりで網焼きなどする際に使用されていました。
鍋を置く座が激しく傷んでいるので、出来る限り溶接はせずに、この部位の修繕となります。

古い時代の五徳の修理_02

この手の五徳は、屋外での使用を考慮したのか立派な足が付きます。囲炉裏端だと自在鉤で吊るすイメージですが、自在鉤が無い囲炉裏でも使用されます。
これまで大小幾つかの寸法で見かけることがありましたが、ここまで大きいのは初めて見ました。そして、鉄質はとても古いです。兵庫県の但馬地域の山間部の集落から出てきました。
何となく、戦国時代でもこんなものを使って野外で調理をしていそうな気がします。

弟子時代に全国へ出張していた折に、小さめでしたが高さのあるこの様式の五徳の中心で炭火を起こして、周囲から輪に串を立てかける形で魚を焼くお店が、山形の酒田にありました。中心部の座は朽ちており2つもあったので「わざわざこんな物をあつらえたのかな?」と不思議に思いつつ、上に網を置けば、網焼きも出来るし、鉄棒二本置けば、焼き鳥も焼けると言う便利な五徳を珍しがっていました。羽釜なら、爪が無くても煮炊きも出来ます。
独立してからも、古鉄を研究物色するとたまに見かけますが、足や爪が炭火で傷んでいたり、鉄素材をケチっていたり、錆びて膨れていたり、状態は悪いものの方が多いです。

修繕は、出来れば鍋置きの爪をそのまま鍛接でつぎ足したかったのですが、足と輪の鍛接がしっかりしており取り外せず、輪を付けたままでは、形状や大きさ的に難しいので、別の位置に爪を取り付ける事にしました。

古い時代の五徳の修理_03

爪の取り付け場所は、直火が当たりやすいので瘦せ細りやすく、適当な鍛接では耐久性も期待できません。
厚めの鉄材を折り曲げ、赤熱し挟み込んだ上で、きつめに打ち叩き固め止めるだけで終えました。

古い時代の五徳の修理_04
古い時代の五徳の修理_05

鍋置きの爪の取り付け部位を二股に割いて、足の位置で留めて元のデザインを維持するほうが良いか悩まされる作業でした。

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