刃物の構造を簡単に説明します。

両刃・片刃と誤解されがちな諸刃

両刃は、刃を切断した際、おおまかに刃身の中心線に刃が来るものが両刃で、アルファベットの「V」の字に近いものとなります。

刃物の構造_01

片刃は、カタカナの「レ」の字に近く、刃先は左右どちらかに偏って位置します。

刃物の構造_02

諸刃(もろは)は、一般的な刃物としては多くは存在しません。形状としては基本的に左右対称で、両側に刃がつくものを指します。
日本では平安時代の遺物に多く見る事が出来ます。また、室町戦国時代の槍なども諸刃であることが多いです。日本の刀剣では発達しなかった理由は、「打撃に弱い」などがあげられるのと、生産性が低く、研ぐ面が増えてしまうため、と言うのも考えられます。西洋の刀剣では、身厚があり、研磨は重要視されず装飾が重視されたため、儀礼用に多くが現存しますが、日本では「諸刃の剣」と言うのは、自分にも禍となる可能性のある、あまりいい意味では使われる存在ではありません。

刃物の構造_03

片刃と両刃の機能性の違い

片刃と両刃では、断面の違いから受ける影響で切れ方に違いが出ます。
両刃は、物を切断する際に、左右両面から抵抗を受けますが、片刃は、片側一面からしか抵抗を受けません。その為両刃では真直ぐ切りやすいですが、片刃では必ず何方かに力が加わり、曲がる傾向が出てしまい、常にこれを補正する必要があります。

製作面での違い

両刃と片刃では、製造工程が大きく異なってきます。
片刃は片面に鋼を貼るだけですが、両刃は中心に鋼を仕込む必要があり、日本においては多彩な製作技術を生みました。
単純なサンドウィッチ構造の「三枚合せ」も、実際には背中に厚く鋼をまいて強度を高めていたりするものもあります。これは片刃の刃物でも同様の工夫をするものがあります。構造が複雑であるほど、コスト面も高くなっていきます。

刃物の構造_04
刃物の構造_05

片刃は構造的に、裏表で素材が「鋼」「地金」と異なるため、「地金」「鋼」「地金」と表裏で同じ素材の両刃とは表裏面の素材から受ける引張係数が異なるため、経年変異で曲がりやすい特徴を持ちます。

ハンドルの構造による違い

刃物の構造_06

ナロータング構造
一般に、菜切り包丁や出刃包丁、柳葉包丁と言った昔からあるタイプの刃物は、「ナロータング」と呼ばれる、挿し込み式の柄になります。
強度的に弱く、茎(ナカゴ)が錆びて朽ちてしまうことが多いです。
メリットは、柄の加工が簡単で手間が然程必要ではない点です。

コンシールドタング構造
この構造の刃物の代表は、日本刀になります。
挿し込み式の柄ですが、茎は平たく、ある程度強度があります。また、取り外し可能な構造にすれば、刃を研ぐ際に外して管理が容易になります。
ナロータング構造に対して、ハンドル材は2~3枚の板部材を加工し、ナカゴをホールドする空間を作り、張り合わせ、接着剤や金具などで強度補正を行います。

フルタング構造
最近のステンレス台所包丁などでも多く見られる、簡単に言うと「柄の形状」=「ナカゴの形状」となっている、強度的には最も高い構造と言えます。
欠点は重量が増加する事で、これを補正するために、タングを出来る限り薄く作ることになります。
一般にはさびやすい刃物では不向きとされるものの、昔から存在もしています。
ナカゴに対して両面から柄材を貼り合わせて鋲留めしたものとなります。

ハーフタング構造
ステンレス製の包丁にも多く見られますが、日本の刃物だと古くは「ナギナタ」がこれに該当してきます。ハンドル材にナカゴが入るスペースを切り込み、そのスペースにナカゴを差し込んで、口金と目釘で固定するタイプとなります。
ナギナタでは柄の強度を補正するために、挿し込み部分を金具等で覆い破損を防ぐ工夫がなされます。