焼き刃の土の製作

子供の頃からの記憶での事ですが
焼き刃の土は?と問われ、「砥の粉」って回答する鍛冶師さんが多いですが、はたしてどうなのか?
結構、謎な面もあります。
ただ、この砥の粉が、京都鳴滝などから産出される仕上げ砥石であった場合は、有効です。
適当に「砥の粉」って回答している場合は、かなり謎です。実際にただの砥石の研ぎカスを使ってると言う人もいました。(再び作るにも再現性が無い・・・)
天然砥石の中砥石には使えるものも多いのも確かですから、砥の粉ってのはあり得る話ではあります。

私の場合、工房が京都市北区鷹峯仏谷と言う立地上、ちょっと山に入ると、前述した「鳴滝」に地名が変わります。実際に工房のある谷間の最奥は「鳴滝吉兆谷」と言う地名になります。
鳴滝は仁和寺から北へ少し行った場所を指しますが、この土地は江戸時代初期の「野々村仁清」「緒方乾山」と言った有名陶工が窯を築いていた土地でもあり、山中をうろうろしていると陶土を見つける事が出来ます。また、狸掘りの砥石坑道も見られます。
砥石の地層と陶土の地層の差は、緩いか堅いか、細かいか荒いか、ってところに大きな差がある感じですが、地質的に成り立ちは近いものを感じます。
工房の大家は林業家でこの土地に大規模に山林を所有されており、工房から登っていく天峰?の山林もその所有地であり、刃物製作に必要な陶土が取れる場所があります。

焼き刃の土づくりの工程を紹介すると、

1)土を採取

焼き刃の土の製作_01

2)水でのばし、植物の根や砂利を除去
ベースの土はしっかり漉してゴミと小砂利を取り除きます。これらは邪魔になります。 

焼き刃の土の製作_02

3)荒砥の粉を混ぜる
砥の粉は荒砥石の粉を入れます。要するに泥岩砂岩の砕けた砂。
水で練ると粘りが出る物で、焼き入れ後の剥離性を良くします。
砥石で言うと「ちゃめすき」と言うのがあったのですが、今現在は、そばを流れる紙屋川の河原で拾う、天然荒砥を粉砕して入れます。比率はベースになる土次第です。

焼き刃の土の製作_03

4)水を抜く
水分が多すぎると、次の工程で炭が分離して混ざりません。

焼き刃の土の製作_04

5)藁灰と炭の粉を混ぜる

焼き刃の土の製作_05

6)半年寝かせる
土の中に残った細かい木の根などを微生物が分解。少しとろみがつきます。
それを5倍程度に希釈して使用します。

焼き刃の土の製作_06

大体、土づくりはこんな感じです。

焼き刃の土を作る際に何を求めるのか?で、作るべき土の姿も変わってくると思います。
個人的には、以下の事をイメージして配合を調整していきます。

・焼き入れの際に剥離せず、水の冷却性能維持し促進する
・火の中で鉄表面を保護し、鉄黒を良く引き出す
・鍛錬中の酸化防止
・刃紋に良い働きをする

半年ほど寝かすと、焼き入れ時に鉄黒味が安定してくる感じがします。
試しに作りたてのものを使用してみましたが、まだ配合が甘いようです。

焼き刃の土の製作_07